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:::Nebula†Garden…ホガラカDiary:::

+ティエリア+


【二次創作書庫…lock*tie】

スカイビュー・ローテーション


+ティエリア+

 ティエリアにとって、ロックオン・ストラトスの死は、たった4年の歳月で立ち直れるほどの浅い喪失ではなかった。
或いは、この漆黒の何処かで、彼が生きているのではないか…。
プトレマイオスの展望室で宇宙-そら-を眺めては下らない幻想を抱き、自己嫌悪の波に襲われ、それを打ち消す日々が続く。4年経って進歩があったとすれば、後追いを考えなくなった事ぐらいだろうか。
手伝ったのは
―― 「…その命…そんなに簡単に捨てられるのか?」
刹那のぶっきらぼうな呟きだった。
── …今、僕が生きているのは、あの時、彼が身を呈して救ってくれたから…。
ティエリアは亡き人に守られた命をあっさり絶つ事も出来なくなってしまい、ロックオン・ストラトスが叶えきれなかっ
た志しのもう一つを、生き抜いて現実のものとしよう…と、今暫く生きる理由を見い出した。
しかし、前向きな思考を持てるようになったからといって、ロックオン不在の心の空洞がそんなに簡単に
埋るはずもない。
―― 今は誰にも邪魔されないけどな…。
頼りない微笑みが展望室の特殊強化ガラスに映し出される。
スカイ・ビューに佇み宇宙に包まれる時、深海でミッションを待つ時、悩みに自問自答する時、かなりの 高い
確率でその男はやって来た。
そして、仁辺もない態度で拒絶を受けても、ロックオンは怯まずティエリアに絡み続けた。
始めは疎ましく思った気遣いに、穏やかな気持ちで応えられるようになった矢先、彼は戦場で還らぬ人と
なってしまったのだ…。
今は、いくらこの場所で時を過ごそうとも、あの安寧をくれる声は聞こえてこない。
もっと彼の事を聞いておきたかった。もっと自分の事を知って欲しかった。
知らされた本当の名前を
── 「“こんな時”までコードネームはやめてくれよ…」
促されて呼んでみたのはたった一度だけ。
── 「ニール…。」
感じたことのない温もりと抱擁の中で、たった一度。羞恥が邪魔してそれ以上は無理だった。
小さな溜め息がティエリアの唇からこぼれ落ちた。
「なんだよ、教官殿はお悩み中かい?」
ティエリアは、ほんの一瞬、期待に顔を上げ、しかし直ぐさま落胆に凍りつく。
そこには、失った仲間と同じ声で話し、同じ声で笑う、同じ容姿の別人が立っていた。

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0811_スカイビュー


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